ほんとうに怖い児童書『怪談レストラン』(松谷みよ子ほか著)

児童書で『こわ~い○○』などとタイトルがついているものがあっても、実際にはあんまり怖くないものが多い。子供向けだから…ということで怖さを控えめにしているのかもしれないけど、
でも

この『怪談レストラン』シリーズはほんとうに怖い


化け猫レストラン―怪談レストラン〈2〉(松谷 みよ子 かとう くみこ / 童心社)




子ども向けだからといって怖さを全然容赦していません。子どもにも本物の怖さを!という著者による本物志向(?)の意気込みが伝わってきます。子どもに怖さを味わわせることが絶対必要だ。という思想の裏付けと自信があるからここまで出来るんだと思う。
そんな本物志向だからこそ、怪談シリーズはどれも小学生に大人気で、巻を重ねること全50巻。大人が読んでもこわいぞ~~~~。おまけ小学生向けの文章だから気楽に読めて、コミックを1冊読むぐらいの時間で読めてしまいます…
言うことなし。

だいたい表紙の絵からしてすごいんですよ。
↑の画像だと小さくて良く見えないけど、ネコの給仕さんが持っているお皿の上にあるものは…

切り取られた人間の手首
しかもお皿からは真っ赤な血がしたたり落ちている


なんだぞ~~~!

責任編集者はあの松谷みよ子さん。売れさえすれば良いという考えではなく、民話と戦争体験にこだわりを持ってお仕事をされてきた彼女の熱い思いも伝わってきます。
幽霊とは実は無念であの世へ旅立ったもの、弱い立場で犠牲になったのものたちの悲しい気持ちが
形になったもの
。怖いお話は本当は沢山の教訓を含んでいるのです。
なんてくくってしまうとつまらなくなっちゃうけど…

以下多少ネタバレになるので、それを承知の方だけ↓MOREをクリックしてください。



以下ネタバレ↓
たとえばドイツの民話『恋人は魔女』のお話はこんなです。

ある兵士の青年が娘と恋仲になり、二人は逢瀬を重ねる。が娘は「金曜日だけは会えない」という。しかし青年は会いたくて会いたくてがまんできず、ある金曜日のよるに娘に会いに行ってしまう。会いに行く途中沢山のネコが月夜の光の中で歌ったり踊ったりしていた。「魔女に違いない」と青年は思う。
一匹の白猫が青年にまとわりついてきた。追い払ってもまとわりついて気持ち悪いので、足を切り捨てて、道を急いだ。
娘の家に着くと娘はベッドで青くなり血だらけになっていた。
見ると娘の足が一本…


この本は世界の民話を題材にした怖いお話のアンソロジーです。
怪談レストラン編集委員会というグループがこの本の著者になっていて、数名の人達がお話を担当しています。

目次はレストランのメニューになっていて、
全部読むとレストランのフルコースを味わったことになるという仕組み。
たとえばスープなら「黒猫の足入り?」なんていう説明書きがついています。

最初と最後のお話は松谷みよ子さんが書いていて、けっこう現代のお話なので怖い。
最初のお話は戦争中の特殊部隊を絡ませたお話で、
化け猫レストランは実は以前は特殊部隊の病院で、
セイタイカイボウしていたらしい。
そこに行ったとき写真を撮ったらば…というお話。

最後のおはなしは今でもよく聞くお話。
ハンバーグを食べに行ったら、うっかり裏口にでてしまい、
そこにはガイコツがいっぱい捨てられていた。
ハンバーグのお肉は実は…というお話。


このお話って今でもハンバーグのお店には付き物ですよね。
後書きによれば、終戦後食べ物のない時代にも流行った話らしい。
伝統あるんだな~。

数年前「コミニュケーション学」の本を読んだとき、噂話の流布というテーマの章にこの話が載っていた。この話と一緒に「ピアスの穴から視神経が」というお話や「銀行のとりつけ騒ぎは女子高生の他愛ないお喋りが発端だった」の話も載っていた。

噂話が広まり、広まる中で尾ひれがついたり無駄が削ぎ落とされたりしながら洗練され、時代の波を潜り抜けてきたもの、それが民話となる。
なんだなーと改めて思いました。
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by riviere7341 | 2005-08-19 19:37

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