乙骨淑子の本『十三歳の夏』を読む

不勉強な私はそれまで乙骨淑子という作家を知りませんでした。
彼女を知ったのは2年前、翻訳家清水真砂子さんの講演会に行ってのことです。清水さんは以前乙骨淑子論をお書きになっており、講演会でそのことに少し触れました。((『子どもの本の現在』清水 真砂子 / 大和書房)

乙骨淑子の本を書店や図書館で見かけることはまれなので、読むのが後回しになっていたのですが、先日図書館で偶然見かけ、「今読まなければ」と思い借りました。こういうのはタイミングなのでしょうね。

講演会で清水さんが触れていた『十三歳の夏』は『乙骨淑子の本 (第5巻)』(乙骨 淑子 / 理論社)に収められています。


十三歳の中学生利恵は生まれてすぐに母親に死なれ、女グセの悪い父親とも別居し祖母に育てられますがその祖母も逝ってしまいます。その後鎌倉の女学院で英語の教師を務める独身の叔母に引き取られるのですが、彼女は深海魚のような目をした冷やかな女性でした。物語は別の女性と暮らす父を尋ねるところから始まります。

利恵が尋ねて行くと父は家の奥で飲んだくれていましたが、一緒の女性は突然利恵が尋ねてきたことにも動揺せず、母性そのもののような愛情で利恵を迎え入れます。居心地の良さにとろけるような気持ちを抱く利恵ですが、彼女は鎌倉の家へ戻る決心をします。


30年ほど前に書かれた本ですが繊細でリアルな描写はけして古くなく、暖かい愛情に出会いながらもあえて厳しい道を選択する主人公の生き方は、自分の娘達をはじめとする今の中高生の生き方とも重なる部分が十分あります。
(今時の中高生でも決して楽な道を求めているばかりではないと思う)。13歳という年齢を的確に表現していると思いました。ただ、とても地味な本ですから本棚に置いておくだけでは読んでもらえない本だと思います。

乙骨淑子さんは1980年乳がんのため51歳で亡くなっています。とても残念。
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by riviere7341 | 2004-08-28 23:59

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by りびい
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