『空中ブランコ』を読む
2004年 09月 14日
型破りな脱力系精神科医伊良部と患者が織り成す自分探しのストーリーが5編収められています。クスクス笑いながら「生きるってそう言うことだよね~」、読み終わった後にはすがすがしい希望がわいてきます。
父親が築いた総合病院の片隅で精神科を担当する医師伊良部はミニスカ白衣でタバコプカプカの看護婦マユミとともに患者の診療にあたっている。太っていてちょっと風変わりな伊良部の診療はあまりに型破り。そのため患者は腹を立てますが次第に彼のペースにハマって行きます。
この本で彼の元を訪れる患者は5人。失敗ばかりの空中ブランコ師、尖端恐怖で血判が押せないヤクザ、暴投するようになってしまったプロ野球選手(この本ではじめてイップスという言葉を知りました)、逆玉に乗ったものの本当の自分を出せないでいるエリート医師、一番自信のあった小説が売れなくて自信喪失の女流作家
患者の症状を診断するとすればどれも神経症かなぁ?読んでみるとどれもそれほど重症ではないから、精神科医にいくほどでもないような気がします。この程度だったら伊良部の役割を友達か家族が担えればほんとはいいんですよね。だけどそれほど重症じゃないからこそ読者は自分のこととして読めるのかもしれません。
日本に比べてアメリカでは精神科医の受診に偏見が少ないというから、アメリカではこんななのかなとも思う。
日本人はもともと神経症的だし、このごろは潔癖症やら過食拒食症と神経症的な方向に流れているような気がするからこういう本を読んで癒される人が多いかも。
心がガチガチに固まったときにこの本を読むと肩の力が抜けて、明日から頑張れると思いますよ。第131回直木賞受賞作