『香水』パトリック・ジュースキント作 を読む
2004年 10月 10日
奇想天外! 「鼻男」の一代記。十八世紀のフランス。あらゆる人を陶然とさせる香水を創り出す匂いの魔術師が、馥郁たる芳香を放つ少女を求めて次々に殺人を犯す 以上出版社レヴューより
カバーの装丁が官能的で、何故にこの絵を?と思ったのですが、物語の内容とカバーの絵がちゃんと繋がった意味を持っているのですね。絵はワトーという比較的地味な画家が書いたギリシャ神話「ユピテルとアンティオペ」の一部分で、カバーには眠っている女性の姿しかありませんが、絵の全部を見ると謎が解けます。
ルーブル美術館に収蔵されているというこの絵はこちらから→Jean-Antoine Watteau. Jupiter and Antiope. - Olga's Gallery
絵の全体を見てみると、あぁおそろしや。
翻訳物は私の頭が消化できなくて苦労することがあるのですが、池内紀さんの翻訳がすばらしい、読み始めたらやめられなくなります。混沌とした中に高貴と愚劣、香りと臭さ、栄光と転落が見事に描かれています。緻密で硬質な文章、そして官能的な物語を堪能させていただきました。23ヶ国語に翻訳され、今なお売れているのだとか。1987年の世界幻想文学大賞(World Fantasy Award )受賞作。